薬剤師は、働ける職場が多岐に渡るという話はよく耳にします。病院や調剤薬局は王道ですが、それ以外にも介護施設やドラッグストアなど実にさまざまな職場でニーズがあります。ただし、それ以上にもっと意外な職場があるとすれば、例え有資格者でなくても興味が惹かれるのではないでしょうか。ここでは驚くべき就職先について解説します。
事件解決ときくと、驚く人が多いのではないでしょうか。これはテレビやニュースで目にする「麻薬取締官」という職業が、有資格者のなれる意外な職業だからです。麻薬取締官はご存じのとおり、薬物犯罪を取り締まる国家公務員を指します。
映画やドラマでしか見たことがないという人がほとんどでしょうが、こうした厳しい現場にももちろん薬の専門家が必要とされています。ほとんどの人が、こうした仕事は警察の仕事であり、一般には関わりがないのではと考えるでしょう。
もちろんその認識は合っていて、もし有資格者が麻薬取締官になるとすれば、刑事訴訟法によって「特別司法警察員」という権限が付与されることになります。これは警察官と同じ権限ですので、就職すれば警察に所属するということです。
当然危険な職務であり、条件はあるものの拳銃の携帯や特殊警棒の携帯も認められ、警察官として職務にあたることになります。薬科大を出て警察官になることを目指す人はあまり多くはないでしょう。ただ優秀なエリートですし、一般的な人生とはちょっと違った世界で活躍できる可能性がありますので、有資格者は選択肢のひとつに加えてみるのもよいのではないでしょうか。ちなみに比較的近しい分野としては、自衛隊で衛生管理全般を担当する職務もあります。
現在全世界が新型コロナウイルスの治療のためさまざまな研究をおこなっていますが、創薬研究者は新しい薬を開発する研究者を指します。ただこれは非常に狭き門であり、職場は大学や製薬会社などのごく限られた部門になります。
薬の開発は非常にハードルが高く、効果が期待される物質が発見され研究が進んでも、最終的には安全性を確認するため10数年という長き時間が必要です。高い志と研究へのモチベーションを保ちながらそれだけの期間コツコツと仕事を重ねる忍耐力が必要ですが、ここに気の遠くなるような数字があります。
それは、薬として世に出回るものは2万ケースに1つあるかないかという数字です。世界の研究者はこの高い壁を越えるため、自分の人生をかけて1つでも商品化できる発見を続けています。
実は研究者になるためには医師や薬剤師の資格はなくてもよいのですが、ほとんどは薬学を修め、何億人もの命を救うためにはたらくプロフェッショナルと言えます。
前述した研究者とは180度異なると言っても過言ではないのが、MRです。有資格者であればもちろんご存じでしょうが、MR(メディカル・リプレゼンタティブ)は製薬会社の医薬情報担当者です。病院や薬局へ自社の薬の有効性や安全性の情報を伝えることが業務ですが、いわゆる営業職とは少し異なります。
そもそもMRは医療機関に価格提示して契約を結べないよう禁止されているため、自社製品をとにかく売ればよいというものでもありません。薬ですから作用や禁忌など重要情報を正確に伝える必要がありますし、何より安全性に細心の注意を払わなくてはなりません。
売った後も結果をフィードバックしてもらい、分析することも重要な仕事です。こちらも資格者でなくても可能ですが、薬学に詳しいことは必須なのでほとんどの場合は有資格者です。成果主義なのでコミュニケーションスキルの高い人でないと務まらない仕事ではありますが、活躍次第で年収1000万円も夢ではないでしょう。