医薬分業が進んで院外薬局が急速に増えていること、また、急速な高齢化によって医療機関にかかり、医薬品に頼る高齢者が増えたため院外薬局の売り上げが増加しています。こうした事情に対応して薬剤師の国家試験合格者1万人近くが毎年、社会へ輩出されても今のところ、余り余剰感が出ていません。
就業条件の有利な職場へ転職を繰り返す薬剤師が少なくありません。もちろん、主な仕事は患者に対して医師の処方箋に基づいた医薬品を調剤して渡し、服薬指導したり、医薬品に関する相談を受けること等です。しかしながら、この程度の業務範囲であれば薬局に共通する担当業務なので、患者がどこの院外薬局へいっても対応の違いを感じることがありません。
サービスに大した違いがなければ患者は病院の出入り口近辺に目立つ看板とともに林立する薬局を利用するケースが多いはずです。ところが、高齢者の増加する社会なので複数の病院や診療科を受診し、複数の薬局で医薬品を処方してもらう高齢者が増えています。
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ところが、医師同士、薬局同士が各々、患者の受診科目等の情報を共有していないことが問題になっています。多種類の医薬品を服用し、体調に不具合が発生して病院へ救急搬送されるケースの発生が少なくありません。服用した医薬品同士が反応して想定外の副作用を引き起こしてしまう事態が起こるわけです。
こうしたトラブルを避けるために以前から国や自治体では患者に対してかかりつけ薬局を持つよう勧めているわけです。患者がかかりつけ薬局を持てば異なる病院や診療科を数か所受診しても同じ薬局を利用するようになります。
そうなれば、かかりつけ薬局で同一の患者に処方される医薬品の種類全部が把握できるので調剤する際に注意できます。
もちろん、調剤した医薬品を患者に渡す際に注意事項等を分かりやすく伝える必要があり、薬剤師は従来以上にコミュニケーション能力が要求されます。その他に、病院や診療科ごとに調剤する医薬品が異なるので、医薬品に関する知識や情報を従来以上に得る必要があり、仕事の領域が広がります。
多忙になる半面、やりがいを感じて仕事に励むことができます。もちろん、かかりつけ薬局の利用が増えてくると最近のように大病院の出入り口に林立している薬局が相当淘汰される可能性が出てきます。
このため、優秀な人でも有利な就業条件の薬局へ転職できる雇用環境が落ち着いてしまう時代が来ると予想されています。それでも、病院や診療科ごとに使われる医薬品が異なるので、医薬品知識や情報を幅広く持っていて、患者とのコミュニケーション能力の優れた人が転職に有利であることは変わりないはずです。